2016.05.11 FUJIFILM

ダイヤルの中に

X-Pro2に限らず、Xシリーズの操作系において”ダイヤル”というのは非常に重要な意味を持っている。
特に、露出に関するコントロール類は、”ひと目で分かる”、”電源が入ってなくても分かる”、”カメラが使える人なら誰でも分かる”、というのをモットーに、インデックス入りのダイヤルが採用されている。
それは懐古主義でなく、あくまで実用主義のもとにある。シャッタースピード、絞り、露出補正、その組み合わせで写真表現は決まる。付け加えると、その組み合わせの前提にあるISO感度。この4つを、いかに確実に正確にコントロールできるようにするか?それが、操作系における実用性であるだろう。
しかし、先代モデルX-Pro1ではこのうちISO感度だけは、メニューの中にあった。我慢すれば使えないことも無かったが、ISOダイヤルを搭載したX-T1が発表されたころより、その有意性は広く知れ渡ることになる。そして、”X-Proの次世代機にも、ぜひISOダイヤルを!”とリクエストをもらいはじめる。

実際、商品企画の初期段階から何パターンもの”ISO感度表示”について検討がなされた。

液晶で表示するものや、露出補正ダイヤルの下部に配置するもの。他にも、多くの案が検討されたが最終的には、現案が採用されることになる。それは、”ひと目で分かり”、”電源が入ってなくても分かり”、”カメラが使える人なら誰も分かった”からである。

デザインの決定と同じように、設計・製造にもかなりの苦労を要した。フィルムカメラで、よく見られた方式のように見えるが構造は全く違うのだ。
まず、選択できるポジション数がフィルムカメラ時代とは格段に増えている。その数22ポジション、内蔵式のダイヤルとしては非常にポジション数が多い。高感度化が進んだ現代のデジタルカメラならではのポジション数だ。 次に、電子的に連動していること。アナログで操作されたダイヤルのポジションは、ここでデジタル的に変換される。確実にどのポジションに入っているか、アナログである人間とデジタルであるカメラの間で共有される重要なプロセスである。そして、最後にそれらのメカを、防塵防滴耐低温構造でパッケージする。
これらの要求を満たすため、SS/ISOダイヤル部は最終的に38点ものパーツを要した。
実は、ファインダー・シャッターユニット・マウントに次いで最も多い部品点数から構成されている。パーツ点数だけではない、非常に高度な技術によって作られたパーツも含まれている。
例えば、22ポジションを確実にステップ操作させるためには、複雑な形状でありながら高い精度・強度のパーツが必要になる。それは、金属粉末射出成形法(MIM=メタル・インジェクション・モールディング)という工法によって実現されることになる。コストはかかるが、金属のタフさと成形部材の複雑形状を両立した優れた手法である。

ダイヤル一つになぜそこまで力を注ぐのか?残念ながらその問いには経済的・合理的な回答はない。
ただ、それがX-Proに携わった人たちの悲願でもあったし、X-Pro後継機を熱望する人たちの声だったのは事実である。